5月が近づくと、毎年、我が家の和室に兜を飾ります。
この兜は、今から58年前、夫が生まれた年に、母方の祖父母が贈ってくれたもの。

いわゆる”年代物”ですが、重厚感があり、どこか凛とした佇まいがとても気に入っています。
長男の初節句のとき、義母からこんなふうに声をかけてもらいました。
「もし嫌じゃなかったら、これを飾ってくれない?」
昭和の雰囲気が色濃く残るデザインで、決して今風とは言えないかもしれません。
それでも私は、その兜に込められた想いや、これまで大切にされてきた時間に、自然と心が動きました。
『節句のものは、お下がりはよくない』そんな話を耳にしたことがあります。
けれど我が家では、あえてそこにこだわらず、この兜を飾り続けてきました。
気が付けば、もう30年ほど。
毎年この季節になると、変わらず和室に飾られています。
子どもたちはすっかり大人になりましたが、こうして季節の節目に同じものを飾るたびに、当時の記憶や、家族で過ごした時間がふとよみがえります。
新しいものも素敵ですが、誰かの想いが込められたものを、大切に受け継いでいくことも、また豊かなこと。
そんなことを、この兜は毎年静かに教えてくれている気がします。
これからも変わらず、この季節にはこの場所に。
そんな小さな習慣を、大切にしていきたいと思います。

